「あ、またブレちゃった」

    そういうと、SHOONINのボーカル兼ギタリストのTRは持っていたデジタル一眼レフをクルリと裏返した。

    液晶に写る３人の顔は、ブレるというよりもむしろ、心霊写真のごとく歪んでいる。

   「まあ…これでもいいんじゃない？」

   ドラム担当のマイケルから、諦めとも納得ともとれる言葉が漏れた。写真の中でスティックを握る背側骨間筋（はいそくこっかんきん）はまるで仁王の様に隆起している。

   「いやー、見事にブレたね。これもまた一興。いとをかし」

     ベーシストのSanoはまるで自分のことではないかの如く、無責任な発言をした。彼はいつもこういうところがある。

   「何回撮っても顔だけうまく写らないなんて変だけど、まあしょうがないか」

    TRは意を決して、この写真をバンドの紹介写真にすることを決めた。今日はなんだか変だ。朝から肩が重いし、目がかすむ。おまけにこの写真だ。こういう日はギターをかき鳴らすに限る。

    「さあ、はじめようか」

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    2017年。新たな伝説が始まる。